私は過去秘書をしていた時にたびたび、『アタマの中がやるべきことと心配と不安でいっぱいで夜も眠れなくなる』という状況に陥っていました。
本社がフランスの小さな日本オフィスでフランス人の社長に付いていた頃、状況はまさにクレイジー!と言いたくなるくらい、毎日色々なことが起こっていました。
大きな会社であれば部門として分かれている総務・人事・経理・ITなどのバックオフィスと言われるオフィスの管理業務の窓口でもあったため、海外とのやりとり含め毎日色々なことが起きていましたし、そこに加えて社長の出張手配や経費清算、打ち合わせの準備や外出時の交通手段の手配、資料作成などなど・・・・
なんでもかんでも私に言うな〜〜〜!!!
と叫びたくなる衝動が度々発生するくらい、クレイジーな状況でした。
私の前に同じポジションで働いていた前任の秘書の方は、それらにすべて対応していた結果、ときには徹夜して資料を作成し(今聞いても信じられませんが・・・💧)、シャワーだけ浴びに家に帰ってまた出勤する、というようなこともあったとか・・・。
私はそのような働き方は絶対にあり得ませんでしたが!
そもそも「仕事に自分を捧げる」という精神が不足していた若い頃の私は、良くも悪くも異常な働き方に対しては『NO』でしたし、外資でしたので社長をはじめとして、そのような働き方をする方がおかしい、という考え方でしたので(残業代もすごいですしね・・・)、徹夜はおろか終電で帰る、などもやったことはありません。
でも、仕事は山のようにありました😆
もう、毎日限られた時間の中でどれだけ優先順位をつけながらタスクをさばいていけるか、これが勝負であり、秘書という仕事の醍醐味でもありました。
そんな中、時々家に帰ってもいろいろなことを考えてしまうことがやめられず、家からもメールをチェックしたり、場合によっては夜社長に、翌日の出張について言い忘れていたこと、などのタイトルでメールを送ったりしていました・・・。
そんなある日、社長から言われたんですね。
「なんであんな時間に仕事のことを考えてるんだ?!お前はいつも心配を頭の中で作り出していて、不機嫌になっている!」
と。
これを言われた時の私は、アタマをハンマーでなぐられたくらいのショックと、ある種の気づきを得られたのですが、でも今思うとまだ、彼の言っていることの本質がわかっていなかったと思います。
正直このフランス人社長のことはあまり好きではなかったのですが、ただ、上司が秘書に望むこととして、
「秘書としての仕事の力量をもっているのはもちろんのこと、心に余裕を持って仕事をし、できたらいつも笑顔で心地の良い存在であってほしい」というのが本音
だったということが今は理解できます。
私はその意味ではまったく、その時点で秘書の仕事の本質を理解できていなかったことになります。
私が心配していることや不安に思っていることを上司である彼が『大したことない』と軽視しているような気がして、なんだか自分の存在自体が軽視されたように感じたのと、でも心の奥底ではなんとなく、彼の言っていること(=ストレスまみれになっていること自体が秘書としてそもそも機能していない)が一理あることもうすうす気付いていたりしました。
ストレスに押しつぶされそうな時は、自分を見失いそうな時
今、多くの方が「やるべきことが多すぎて頭の中がパンパン」状態に陥っているのではないかと思います。
これは、先ほどの私の秘書時代の話が今から20年近く前であるとして、あの時からいろいろなことがさらに便利になっているにも関わらず、私たちの頭の中の忙しさは変わっていない、いやむしろ「もっと」忙しくなっている、ということが言えると思います。
そう、結局のところ、便利にはなってもそのぶん、私たちの生活を進める変化のスピードは増していて、やらなくてはいけないこと、これは肉体的にというよりも思考で判断を迫られることというのがどんどん増してきているということなんですね。
肉体の部分ではたしかにラクになっているのかもしれません。これからはAIの進化によってその点はもっと加速するでしょう。
でも、一方で私たちに迫り来るのは日々たくさん発生する『あらゆる判断と決定』であり、また人間関係やそこで起こるしがらみや軋轢(あつれき)に関しては、時代関係なくずっと存在しているものだったりします。
便利なようで手間や心配事を増やしているとも言えるのが、いつでもどこでもコミュニケーションを可能にしているツールの存在というのもあります。
LINEなどのやりとりはもちろんのこと、SNSなど見知らぬ人とも自由に繋がれるツールも含めると、私たちの脳は情報を受け取りすぎて、物理的には今目の前にいない人のことなのに、影響を受けたり、気になったり、メッセージが来て返事をしなくてはいけなかったり・・・・。
このようなコミュニケーションのあり方が進化したことも、脳がまったく休まらない状態をつくっている原因かもしれないのです。
さて、そんな頭の中が「自分以外のことで忙しい」とき、ぜひやって頂きたいことがあるとすれば、それが瞑想であり、頭の中の言語化です。
理由は、意識が散漫している状態から自分の中心に戻す必要があるからで、その効果を発揮するのが瞑想と言語化だからです。
逆に、瞑想や言語化ができていない場合、どうなるかというと・・・
頭の中がパンパンで休んでいないだけでなく、何が重要で大切なのか、心でも理屈でも訳がわからなくなっている状態だと思われるのです。
そして、この状態が続くと、気持ちも不安定になって前向きな見方ができなくなってしまったり、その結果ストレスに対する敏感さも増して心だけでなく体も弱ってしまう、ということになりかねないのです。
ほっとする瞬間をつくってまず感じよう!
先述のフランス系の会社で働いていた頃、近くに見事な庭園で有名なホテルがあったので、私はよくホテルの庭を散歩したり、ホテルの中でコーヒーブレイクをしたり、時には勤務中でありながら散策してショッピングしたりすることもありました😆
この行為が勤務中の行為として良いかどうかは別として(普通はダメですよね・・・)、我ながらとても良いメンタルのバランスを整えるセルフマネジメントだったと思っています。
幸いフランス系ということもあり、仕事さえしっかりしていれば、フランス人たちも日本人たちも勤務時間中ずっと監視しているような雰囲気ではなかったですし、また何より、自分のメンタルを良い状態に管理するのは自分にしかできないことも当時からわかってはいたので、「キー!」となって頭の中がパンクしそうな時にはとても有効の気分転換の方法でした。
それに、当時一緒に働いていたフランス人たちがよく、近くにあったフレンチカフェでランチなどしながら、テラス席でワインも楽しんでいるのを目撃することもありました。
日本人的な感覚からすると、勤務時間中にアルコールなんて不真面目極まりない行為!なんですけれど、彼らにとっては「水」みたいなもののようで、もちろん、酔っ払っているなんていうことはあり得ないグラス1〜2杯とかのレベルではないかと思います。
あとは、別のアメリカ系の会社で仕事していた時などは、たまたまオフィスがあった建物の下に屋外プールがあったのですが(都内ではなく、神奈川でした😉)、上司はよく、「今日はプールサイドで仕事してくる」などと言って出ていくことがありました。
まぁ、とても小さなオフィスでしたし、特殊な環境だったとは思うのですが、このような環境でお仕事をした経験から学んだこととして
「プレッシャーにさらされている人ほど、緊張を和らげる自分なりの方法を心得て実践している」
ということです。
今、マインドフルネス講師として改めて思うことは、これらのどれも、とても効果的なリラックスする方法であり、手段なんですよね。
つまり、勤務時間中の真っ只中に、いかに「ゆるんでほっとできる」時間をつくれるかということです。
そして、たくさんのタスクで頭がパンパンになっていたり、期日のあることを目の前にしてプレッシャーで動けなくなっていまっている時ほど、こういった時間を上手にもつことは、結果として仕事のパフォーマンスにも良い影響を与える可能性が高いのです。
いっぽう日本人のストレス発散法でありがちなのは、最近は昔ほどはあまりないのかもですが、仕事後の飲み会ですね。そこでは仕事のストレスやプレッシャーを忘れて、また上司・部下などの役柄も超えて腹を割って話すことで、ストレスの発散になったり、悶々としている心理状態を解放してくれる効果もあるかもしれません。
ただ、これについてはあくまで「オフの時間」だということがポイントです。飲み会で話すことはすべて「いまだから許されることであり、明日になれば忘れること」のような、そんな感覚があるのも事実かな〜、と思います。
実際、次の日オフィスに行くと「昨夜何事もなかったかのように」朝から目も合わせない、というような態度に驚き戸惑った、という外国人たちの意見も聞いたことがあります😅
なので、行き詰まっていることや問題の本質的な解決に結びつくか?というと、疑問が残ると私は思います。
それに対し、私が外資系の会社環境で学んだことというのは、オンの時間でありながらリラックスできる時間をもてている必要があることと、また逆に、オフの時間であっても真剣に何かに取り組むときは取り組む、ということ❣️
それはたとえば、趣味だったり、バカンスだったり。休む時も遊ぶ時も真剣に休んで遊び、思いっきりその時間を感じて味わうということなんです。
その逆に、休みをとったはいいけれど、みずから作った計画にかえって疲れてしまってたり・・・のように、仕事も休みも、「〜すべき」に縛られている状態であるならば、そのように偏った脳と心のバランスをまず整える必要があるのではないでしょうか。
まとめ
日本人が真面目で勤勉なのは世界的にも有名なこと。
ただ、その真面目さと勤勉さがつねに「〜すべき」という観念にしばられていることで発動している状態であるならば、それは危険な状態です。
だって、そこには、「〜したい」や「〜したくない」が入り込む余地がなくなるし、「〜したい」や「〜したくない」を思わなくなるということは・・・
何も感じなくなる
というのと同じだから。
何も感じていない状態が続くと、人は生きている感覚が薄らぎます。喜びも悲しみも、生きているからこそ感じるさまざまな感覚が、「よくわからないもの」になってしまうのです。
このように、生きている感覚が薄らいでしまっている状態こそが、いわゆる「生きにくさ」だとしたら、その前兆として発生しがちなのが
〜すべきなことで、頭も心も時間もいっぱいいっぱい
で苦しいという状態ではないでしょうか。
ちなみに、仕事でも私生活でも上手にバランスを取って人生を楽しんでいる人の中には、ものすごい過密スケジュールで動いているにもかかわらず
頭と心はちゃんと、バランスがとれている
という人が多いです。つまり、健康なんです。
そしてもちろん、健康だから成功(成幸)している、とも言えるのかもしれません。
やるべきことがたくさんあって、大きな責任も背負っていてつねに判断を迫られている。
そんな状態にある人たちだからこそ、心と体の健康にはものすごく気を遣っていることが多いし、またよく観察してみると、心にも頭の中にも余裕があることが多い。
余裕。それは仕事中であってもジョークが思い浮かんでくるとか、深刻な状況ほど笑いにしてしまうユーモアのセンス。あるいは、どんなに忙しい時であっても、大好きなコーヒーを楽しむ時間は忘れないとか、家族やペットと過ごす時間は仕事のことを考えないとか。
もしも今、頭の中も心の中もいろいろな「〜すべき」でいっぱいだという方はぜひ、そこにスペース(隙間)をつくることをやってみましょう。
たとえ仕事中であっても、頭の中の休憩を許してあげること。大好きなものを思い浮かべたり、ちょっとしたことで五感を楽しませたり、のようなこと。
これは、時間的に隙間を作って体を休めることよりも、もしかしたら有効な手段かもしれないです。なぜならどんなに時間的に隙間を作っても、脳や心が休まっていない人たちが多いから。その結果結局は、心から病んでいってしまう、というケースも多いのではないかと思うからです。
そんなことしたら集中していないことになる?!
いえいえ、こうやってオンの時間でもリラックスすることが習慣としてできている方が、本当に集中する必要があるときには、「ものすごい集中力を発揮する」ものなのです😉❣️
集中のパフォーマンスは普段の脳の使い方で決まること、最近は脳科学でも証明されてきていますね。その意味ではよくない状態である「頭がいつもパンパンな状態」をどうしたら解消できるか?が脳と心、体にとっての健康の鍵になると思います。