私は、作家の本田健さんが好きで、「ユダヤ人大富豪の教え」もエッセイも、大体は読ませて頂いています。
イタリアにいた頃はよく、ベネチアで滞在していた修道院を改築した部屋の中で、本田健さんのラジオをYoutubeで聴いていたりしていました。
その本田健さんが仰った言葉で、とても印象に残っているものがあります。
正確なフレーズではないのですが、内容としては、
人は自分で未来を決めて行動しないと人生の轍(わだち)に気づいたらはまり、そこから抜けられなくなってしまう
というようなものだったと記憶しています。
この「人生の轍」とは、わかりやすく言うなら宿命です。
運命が自分で切り開いていけるものであるのに対し、宿命は自分では選ぶことができず、また生まれ持った人としての資質や家族から受け継いだ生き方の傾向が、人生を決めるというものです。
いろいろな考え方がありますが、その中で、人生は100%自分で決めている、というものと、
そうではなく、与えられたものを受け入れることが生きるということであり、そこに選択というものはない、
とするものと、極端にいうと2つの見方があるように思います。
これは、考え方次第でどちらも正解なのではないか、と私は思っています。
100%自分で人生を決めている、という考え方は、与えられたものも含めてどう生かすかは自分次第なので、起こることにどう意味づけして自分を成長させるか次第である、とする考え方。
最近の欧米から入ってきた成功哲学とか、引き寄せの法則などもこちらに当てはまるのかな、と思います。
一方で、与えられたものを受け入れること、エゴを手放してただ目の前のことに心を集中させて生きること。それが生きるということであり、そこに意味づけをしたり、目標を立てたりしてコントロールしようとすることは傲慢である。
とするのは、どちらかというと東洋的な、仏教などの考えもこちらに近いのではないかと思います。
本田健さんのおっしゃる人生の轍とは、何も意識せずにそのままに生きていたら自然にたどることになる持って生まれた生き方や宿命、を言っていると思うのですが、
そこで、この宿命が望むものでないならば、自分の意志で行動を起こすことで変えていくしかない、と本田さんは仰っているのです。
つまり、先の2つの考え方をどちらも正解とした上で、自分でそのバランスを決めていく、ということではないかな、と思います。
与えられた轍が心地よくて、抜け出す必要がない人もたくさんいると思います。
その場合は、それでも十分幸せかもしれませんが、魂の成長、という意味では物足りなく感じてしまうのではないでしょうか。
逆に、轍がハードでしんどいものである場合には、「ここから抜け出したい」という強い気持ちが原動力になって人は成長するし、自分の人生というものを自分で切り開く力を身につけていくことになるのではないかと思います。
轍から出るときの落とし穴
この人生の轍って、結構引き戻す力が強力で、例えば前を見て歩いていても、もう気づいたらそちらの方向に向かって進んでしまう、ということが起きてしまいがちです。
だから、かなり強い意志でそちらとは反対の方向に向かう必要があるのですが、
この時に元の轍を否定する=生まれ持った自分のあれこれを否定する、ということをしないようにすることが大切だと思います。
例えば、アメリカのハリウッドスターや歌手の中には、貧しい家庭の出身でありながら大きな成功を納めた人たちがたくさんいます。
自分の実力で、轍とは別世界の中に自らの道を見出して進んでいくのは、実力主義のアメリカなどではよくあることかもしれません。
成功を収めた後に、セレブと呼ばれる彼らの中には精神を病んでしまう人も多くいることは、成功後のきらびやかな世界と、幼い頃から抱えている心の傷や不安とのギャップによるものかもしれないですね。
どんなに評価されて人々から注目され、愛されても、心の奥底の自分が肯定されて受け入れられていない場合、そのギャップはどんどん大きくなって苦しくなってしまうのは想像に難くないことです。
やはり、何においても言えることですが、自分を肯定するマインド(=心の在り方)をもつことは、どんな道であっても自分を生き抜くための基本であり、また、轍から出て別の成功の道を歩む人にとっては必須のことではないかと思ったりします。
まとめ
今日は、人には誰でももともともっている「人生の轍」、深くてはまり込みやすく慣れ親しんだ道すじ、について書いてみました。
お金持ちの家庭に生まれ育てば、子供もそうなっていきやすく、その逆のパターンも然り。
蛙の子は蛙、みたいなことですよね。
でも、そうではない人生をみずから切り開いて生きている人たちは世の中にはたくさんいます。
そして、そのようにして轍から抜け出して自分の人生を切り開いていくときの土台となり、幸せに生きるために必須となるのが、しっかりと自分を愛し肯定する、ということなのです。
成功者には家族関係が良好な人が多い、ということもよく言われますが、これは幸せな成功というものが、自分の生まれ育った環境や周囲の人を受け入れているか?ということと深く関係していることを示してします。
もともと生まれた家庭が穏やかで幸せな家庭だったから、心も強く大きく育ち、成功した、という見方もできますが、もちろん、最初からそうでない場合は、受け入れることで自分を成長させ、成功した、ということでしょう。
場合によっては試練となる家族関係であっても、向き合い受け入れるということが、成功していく時には必ず必要になるのだと私は考えています。