「ポジティブ幻想(Positive Illusion)」という言葉があります。
定義は以下の通りです。
「自己高揚的動機に基づく様々な 認知バイアスのことであり, 実際に存在する物事を, 自分に都合良く解釈したり想像したりする精神的イメ ージや概念 と定義される(Taylor & Brown, 1988)」
出典はこちら
つまり、現実を自分にいいように、都合よく解釈すること、とのことですね。
これについては、個人的には「それの何がいけないの?!」と思う節もあります。
理由は、こちらのブログでも繰り返し書いている通り、現実を創っているのは結局のところ、その人が現実をどう捉えるのか?次第なのだから、
ものごとをどう解釈するのか?はその人次第であるし、実際にポジティブに解釈した方が、人生そのものが上手く行きやすい、というのはいろいろなところで実証済みだからです。
ただ一方で・・・
注意した方がいい「偽ポジティブ」な状態というのがあり、これは結構陥りやすいところだと思いますので、今日はこのことについて書いて見たいと思います。
偽ポジティブは、あなたをもっとツラくさせる!
偽ポジティブとは、ひとことで言うなら、「気合いでもっているポジティブ」な状態です。
ネガティブなこと考えない!
ネガティブなこと言っちゃダメ!
ネガティブなこと聞きたくない!!
ということを心の中だけでなく、あまりの気合いで周囲の人にも要求してくる場合もあり、はたから見ていてもなんとなく痛々しい感じも伝わってきます。
そして本人からすると、かな〜り!ガンバっているので、もちろん次第にツラくなってきてしまうのですが、そのことを自分で認めることがなかなかできません。
「私はポジティブ。大丈夫、必ず幸せになる!!」
何度も自分の心の中で言い聞かせることで、内側の不安や恐怖心など、ネガティブ感情に蓋をしている状態。
だから気合を入れていないと、
その蓋が外れてしまったら自分がどうなってしまうかわからない
という不安と恐怖が根底にはあるのです。
感情は、蓋をして見ないようにすればするほど、消えて無くなることは決してない上に、むしろ増幅してしまう・・・という側面があるので、大切なことは、
どんな感情ともしっかり向き合うこと
なのです。
コーチングセッションでは、このネガティブな感情や思考を生み出している、心の根っこの部分を見ていくことをするのですが、場合によっては時間がかかるケースもあります。
その一方で、割と早い段階で、長い間抱えてきた自分の思考パターンやそこから発生していた心のブロックに気づき、癒しが早く進むケースもあります。
ネガティブ思考がどこからきているのか、根底になっている価値観や、そこから生まれていた心のブロック(本来の自分の思いを打ち消してしまう心の動き)に気づくことは、自分を癒して受け入れる第一歩です。
ここの気づきとその後の言語化や日々の生活での実践が上手くいくと、表情も何もかも変わって別人のようになる、ということが実際に起こるのを私のクライアント様からも見てきました。
では、そのプロセスが上手くいかないのは、何が原因でしょうか?
自分を変えることは、「負け」でも「自己否定」でもないことに気づこう
私たちの脳は、生きていく中で多くを「学んで」効率化していきます。
だから、同じことを見ていても、解釈が人それぞれことなるのは、あなたが採用している脳の方程式、つまり、解釈のパターンによるものだから。
このような解釈のパターン=思い込みの中から、役に立たないものはできるだけ手放して、そこから自由になる、ということを私のコーチングでは取り組んでいて、その時に助けとなるのがマインドフルネスの実践です。
マインドフルネスとは、一瞬一瞬のできごとを、過去起こったことや未来起こりうることと重ね合わせることなく、ありのままにみて、感じ、体験できるというあり方のこと。
つまり、何十年も生きてきて、何度も遭遇してきたようなことであっても、「同じ出来事は一つとしてない」という意識で、どれだけ五感と心を開いて向き合うことができるかどうか?が重要になります。
思い込みという鎧を手放していくと、そこにはもう忘れ去ってしまっていた、無防備で無垢で、傷つきやすいかもしれないけれど、とっても感受性が豊かで感動しやすい、本来の自分が顔を出してくるかもしれません。
そして、そんな自分をいつからか、見せないように守る癖がついてしまったことにも気づくでしょう。
鎧を外していくためには、もちろん、その鎧に触れて、壊していく必要があります。
本物のポジティブ状態とは、ネガティブを否定することではなく、受け入れ、癒し、またこれからもしっかりとそこを見つめていく自分ができてはじめて可能になります。
先ほどの、自分癒しのプロセスで停滞して止まってしまう人は、最後まで行かずに、途中の段階で
自分と向き合うことから逃げてしまう
ことで、中途半端なポジティブ=偽ポジティブな自分を作り出してしまうケースです。
では、なぜそこで最後までいく(思い込みの鎧を壊して自由になる)ことを拒んでしまうのでしょうか?
それは、今まで頑張って作り、着用してきた鎧を壊すことは、それまでの自分を否定することだという思考の方程式をもってしまっているから。
自分を変えたいのに、なかなか変わらない。
この状態にはまりこんでいる人は、心のどこかで変化を恐れているし、拒んでいるんですね。
その恐れは何かな?と見つめてみると・・・
自分のこれまでのやり方が間違っていたなんて、認めたくないし、変えたくない。
間違いを認めることは、自分を否定すること。
そんな思い込みを強くもってしまっている人が、多いように思います。
まとめ
ポジティブに本物と偽物があるとしたら・・・
本物のポジティブというのは、
ものごとを良いように解釈して、できるだけ自分にとって楽で優しい選択をしていく思考や感情のあり方です。
この状態で生きている人は、実際に人生で望むことを実現していくし、周りにも同じようなポジティブで前向きな人が集まってきやすくなり、お互いの相乗効果でどんどん成長もしていきます。
この状態の人に、ネガティブがまったくないというわけではないのです。
ネガティブと上手に向き合い、それに支配されない生き方・あり方を選択しているんですね。
それに対して、偽ポジティブな状態では、ネガティブを見ないようにしているし、その根底には恐れと不安があるので、ポジティブでいながら地に足が着いていない感覚があるのが特徴です。
もしも、偽ポジティブな状態に陥っていることに気づいたら・・・
変化を拒む自分がいないかどうか。
そして、その拒む気持ちの中には、変化を受け入れる=負けや間違いを認めるという思い込みがないかどうか。
ぜひ考えて見てください。
人は変化しながら成長していくものです。
いくつであっても、変化を受け入れられる自分でいることが、あなたの人生を豊かにするはずです✨